プエルトリコというと建築型と出荷型という分類で語られたり、この建物は強いとか弱いとか語られたりすることが多いのですが、それらはこのゲームの捉え方のひとつでしかありません。建物をただ所持しているだけではフレイバーテキストの書かれた1~4点の得点チップでしかありませんし、コーンタイルを何枚持っていても稼働しなければ何も生まれません。
ご存じの通り、稼働させるためには市長フェイズで人チップを配置する必要があります。そして人の数はまんべんなく全プレイヤーに配布されるわけではなく、建物の空きスロットで移民船に乗る数が変わりますし配布される人数にも傾斜が生まれます。実際に人数差を利用したプレイの実戦例をご紹介します。

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いきなりですが終局図です。R13建てきりエンドですが、4番手の2枚目の大建物である砦には人が乗っていません。建物点とボーナス点の合計は1番手から順に12/13/26(19+7)/31(23+8)点です。3番手の港造船所に出荷点を6点差つけられていれば負け、5点差でタイブレーク勝負という状況です。普通はこういう体制ですとコーン4枚の港造船所は24点以上出荷しているでしょうし、小倉庫のないコーン2枚の5品種工場では10点台前半出荷できれば上出来というところです。ですが実際の出荷点は1番手から順に12/17/14/15点で、トータルでも4番手の勝ちでした。なぜこのようになったかと言うと、最大の要因は人数差です。ゲーム終了時、1番手から順に人の数は17/12/10/13人です。冒頭で書きましたように、人数差を活かしたプレイングでこのような結果となりました。

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初手宿屋のオープニングです。宿屋がいると多スロット建物を建てていかないと移民船の数が増えないので人の数が重要です。2番手はたぶんクリックミスで小市場ではなく小サトウを買ってしまったと思いますが、めげずにR1-2開拓でコーンを選んでくれました。これで3番手に2枚目のコーンが回るのは回避できました。

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安心していたのもつかの間、R3-3開拓で1番手が宿屋で採石場を稼働取得した時、2番手はコーンではなくタバコタイルを取りました。タバコの上家を取る狙いでしょうが、このゲームではタバコを建てられるタイミングで大市場を建てていました。宿屋で人の少ない展開で、タバコを先着しておりすでに1回市長を選んでいる3番手に無条件でコーンが回るのは大変厳しい展開です。

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本当はR4-1建築でコーヒーを建ててタバコに人が乗る前にコーヒーを間に合わせたかったのですが、売却額負けすることよりも他人に市長を選ばれることが一番厳しいのでR4-1市長(+1)でコーンインディゴ採石場体制を作ります。

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市長を入れて我慢したのですが、R4-2開拓でまたしても2番手がコーンタイルをスルーして3番手にコーンが回りました。続けてR4-3監督(+1)、R4-4商人(+1)で3番手がタバコ小市場売りとなり8ダブロンに届きました。すでに3番手がほぼ勝勢ですが、プエルトリコは2位を目指すゲームではなく1位を目指すゲームですので、2位以下に順位をつけてレーティングを変動させているBGAが間違っているだけですので、心折れずに勝利を目指します。こういうゲーム展開が嫌で強豪以上などとプレイヤー制限する方もいますが、私は世界中の色々な面白いプレイをするプレイヤーたちと対戦することが好きなのでランク制限はしていません。勝てないと途中抜けする人やコンビ打ちする人は流石に次は避けますが。
また、プレイスタイルの固まった中級者よりも、色々試行錯誤している初心者、初級者の方が面白い原石のようなプレイをする人が居たりして、勝っても負けても楽しいゲームがたくさんあります。レーティングにこだわってランク制限するとそういう新たな発見ができなくなります。レーティングを上げることは私には意味がなく、面白い4人プエルトリコがしたいだけなのです。

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売りが一巡したのでR5-1建築(+1)が入りました。ここで3番手が小倉庫を建てると3番手勝ち確ですが、タバコ独占を活かして大市場を建ててきたのでまだ逆転の余地があります。R5-2船長(+1)と進み、R5-3で市長を入れられたらほぼ逆転不可能でしたがR5-4金鉱(+1)を選んだのでまだ逆転可能です。プエルトリコは要素が多くて判断材料が多いので、最初から最後まで最善手を選ぶのは難しいゲームです。また、勝ってもミスしていることもありますし、ノーミスでも負けることもあります。3番手の大市場も1ダブロン乗りの金鉱を選んだのも最善ではないと私は思いますけれど、ミスとは言えない手です。
R5-4市長でコーヒーを稼働させ、コーンインディゴコーヒー採石場体制を作ることができました。小市場は稼働できませんが生産産品を減らさないことと採石場の稼働が優先です。大市場を建てられてしまったので売却レースとなる展開では勝てません。相手の強い部分で戦うのではなく、人の多さと産品の数で勝負します。ここでやっと次の移民船は5人となったので市長を選べば3人来ます。

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採石場0枚では戦えないと判断した2番手がR6-1開拓(+1)を選び採石場を取りました。コーンが2枚あったので3番手4番手がコーンを取りましたが、ついに3番手のコーンが4枚になりました。ここで3人来る市長を選ばれたら3番手勝ち確でしたが、R5-2監督(+1)が選ばれたので、4番手は商人ではなくR6-3船長を選び、7船をインディゴにして5船をコーンにしました。これで小倉庫をカットすればまだ戦えます。

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コーヒーとタバコ以外が船に流れ、売り玉がなくなったのでR6-4建築で1番手は小倉庫を建てました。2番手も小倉庫を建ててくれたのでこれで当面の脅威は去りました。商人の前なので3番手は6ダブロンしかなく、造船所に届きません。ここで大倉庫を買う選択が最善手とは思いますが、3番手はお金を節約して小インディゴを建てました。流石にこうなると3人来る市長の意味は薄いと3番手は判断し、R7-1商人(+2)でタバコ大市場売りで14ダブロンになりました。おかげで4番手はR7-1市長(+1)を選び、4品種生産体制を作ることができ、これでギリギリ互角に持ち込めました。

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3番手が造船所を建てて監督連打してくる可能性が高いのでその準備としてR8-1建築(+1)で工場を建てました。3番手は造船所を建ててきましたが稼働前にR8-3監督が入り、R8-4商人と進みます。以後、4番手はギルドホールを建てて速攻を狙い、タバコを建てて5品種工場、ラウンドコントロールしながら3番手の港造船所があまり稼働しないようにして建てきりエンド、冒頭の終局図に至ります。建物が強くてもコーンが多くても稼働しないと強さは半減されるので、序盤の出荷点差を活かしてギルホ速攻で逃げ切りました。

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4人プエルトリコのコーヒータバコプレイをご紹介します。普通はコーヒーかタバコのどちらかと、コーンとインディゴサトウの3品種もしくは4品種体制を作り、工場や港を建てるのがバランス的には良いのですが、局面によってはコーヒーとタバコの両方を建てることもあります。

コーヒーかタバコのどちらかしか建てていないと上家に被せられた時、被せられても売却できるように商館を建てたり、売れなくてもお金が入るように工場を建てたり、サトウ売りやインディゴ売りを覚悟して大市場を建てたり工夫が必要となりますが、下家の高額産品に被せつつコーヒーとタバコのどちらも建てると一手で済み一石二鳥となることがあります。

とは言え、コーヒー船とタバコ船が両方できることは少ないので、小倉庫は必須となります。一方でコーヒーかタバコを小倉庫に1、2個保管したところでたいして強くはありませんので、コーン小倉庫プレイと組み合わせることになります。実際、コーヒータバコを大市場でバンバン売却するようなプレイも可能かもしれませんが、出荷プレイの対応が難しく、自分自身が出荷プレイヤーになれるコーン小倉庫プレイと組み合わせるのが一番です。言い方を変えるとコーン小倉庫プレイのバリエーションのひとつでもありますので、コーン小倉庫プレイヤーの裏芸のような戦法です。

普通のコーン小倉庫プレイは別記事でも書いてますが、コーン3枚小倉庫とインディゴサトウの低額3品種で監督を多用し、仮にコーヒー船タバコ船を作られても残りのひとつの船は絶対に品種が合うので、その一致する船を満杯にできるようエクストラの産品を選んだりコーンを追加で保管したりしながら低額3品種だけで28点出荷して税関を建てて7点ボーナスを狙うのを理想としています。小市場小インディゴ小サトウ小倉庫税関で建築点8点+α、出荷点28~32点、税関ボーナス7~8点の40点後半で勝ちきる方針です。

一方でコーヒータバコプレイは常にコーヒー船タバコ船を作り港プレイヤーの出荷を妨害し、残りのひとつの船にコーンを大量出荷するよう船をコントロールする方針となります。大生産設備のコーヒーとタバコを建てるのでギルドホールも当たりの大建物になります。税関よりもギルドホールを優先して建築プレイヤーのギルドホール速攻も封じる形となります。こう書くと良いことづくめのような戦法ですが、実際はコーヒーとタバコを両方建てつつコーン3枚を拾って小倉庫を押さえるのは結構難しいので決め打ちで狙う戦法ではないので、プランテーションタイルが偏ったときにこういう戦法もあったなと思い出して活用していただければ幸いです。では、実際のゲームを追って解説します。

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4人プエルトリコの3番手です。初期プランテーションタイルはコーン0枚で落ち着いたオープニングでしたが、2回目のタイルがコーン4枚とコーヒーと、酷いことになってました。開拓が選ばれれば絶対にコーンが入手できるので、1番手2番手は出荷ゲームに対応すべく小インディゴ小サトウを建てに行ってます。3番手はコーン2枚タバコの形を狙いますし、4番手は1枚だけあるコーヒーを狙う方針になりそうです。

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R2-1市長が入った局面で監督を打ちました。監督を打つとひとりだけ売れないのが確定しますが、監督のボーナスダブロンで所持金が3ダブロンになりますし、このラウンドに建築が入らなければ次のラウンドR3-1建築(+1)で5ダブロン分まで建築できるのでタバコに届きます。4番手はコーン小市場売りで6ダブロンに届きますのでR3-1建築でコーヒーを建ててR3-2開拓コーヒーでコーヒー体制を狙えます。2番手がインディゴを売却するかは未知数ですが、売らなければR2-4船長(+1)で2vp1ダブロン稼げますので、採石場がオフの今R2-4建築をするとは考えにくいです。このR2-1市長からの1番手インディゴ体制採石場オフの形で3番手が4番手のコーン小市場に向かってR2-2監督を打ち込んでいくのは手筋です。

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実際は、R2-3商人(+1) 4:コーン+2 1:インディゴ+1 2:サトウ+2 R2-4金鉱と進みました。金鉱はちょっとした変化です。R3-1建築(+1) 3:タバコ 4:コーヒー 2:インディゴからR3-2開拓(+1) 4:コーヒー 1:コーン 2:コーン 3:コーンとここは予想通りの進行、R3-3船長(+2)と船長のタイミングをずらしてきました。意味合いとしては、1番手はインディゴを売りつつ金鉱で1ダブロン拾い、回ってくるのが想定される2ダブロン乗り船長で6ダブロン採石場体制を作り次に工場の狙いです。R3-4市長としてR2-1市長からの連打で2番手は低額3品種体制を整え、それぞれの言い分が通った形となりました。3回目のプランテーションタイルもインディゴ4枚コーヒーとまたしても酷いことになっているので、ここで3番手はコーヒータバコプレイを狙うことにしました。

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R4-1金鉱(+1) R4-2建築 1:工場 2:小倉庫 4:小インディゴと進み、R4-3開拓 2:採石場となったので3番手はコーヒータイルを拾いました。コーヒータバコプレイの狙いです。バスターの手筋の応用でR4-4監督(+1)としてラウンド跨ぎ監督でタバコ売りを狙います。R5-1は船長(+1)か商人(+2)かのどちらかですが、心理的に(2ダブロンと3ラウンドを分け合う)空商人を選びやすいように3番手はあえて小市場をオフにしてます。4番手がコーンを生産していないため仮に船長を選んでもコーヒーが流れタバコは残るのできちんと応対して船長を選んでも意味がないというのもあります。そこで欲張ってエクストラはタバコを選んでいます。

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R5-1市長(+1)で1番手は工場を稼働、R5-2商人(+2) 3:タバコ+3と進みました。R5-3船長(+1)で3番手の所持金は6ダブロンとなりコーヒーを建てる資金を集めました。コーヒーは流れたので4番手に所持品はありません。2番手は手元にサトウを残し序盤の均衡を保っています。

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R5-4は建築でしたが4番手は船が合っているので小倉庫カットではなく品種を増やす小サトウを選びました。3番手は狙い通りコーヒーを建てます。R6-1開拓(+1)で2番手はサトウ売りの商人ではなく開拓を入れて採石場の枚数を主張点としてきたので3番手はコーンタイルを拾いました。商人を入れてたばこを売ることもできますが1ダブロン乗りの金鉱はありましたが市長優先です。R6-2市長で3人来ましたのでコーヒータバココーン3枚小市場の体制を作ることができました。R6-3金鉱(+1)と進み3品種工場の1番手がR6-4監督(+1)とラウンド跨ぎ監督を入れてきました。

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R7-1船長(+1)でコーン2個から出荷、コーンとタバコで2個腐りますが4点出荷です。R7-2建築で4番手は大市場を建てR7-3商人(+1) 1:サトウ+3 3:タバコ+3 4:コーン+1となりました。採石場持ちで所持金なしを避けたい2番手はR7-4金鉱、R8-1市長(+1)、R8-2建築 1:港と来たので3番手はここで小倉庫を建ててコーヒータバココーン3枚小倉庫の体制が完成しました。コーヒー船が掃けないようにしつつタバコ船を作り港の稼働を減らしながらコーンを大量出荷していきます。

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終局図です。放っておくと1番手は大倉庫にあるインディゴサトウを出荷し税関も建てられるので、3番手はR15-1監督を入れてR15-商人を誘導し、所持金が大建物に届いている1番手以外に4番手にも届かせ、2番手も自身の建築だと大建物に届くように仕掛けました。これで1番手は船長と建築の2択となりひとりだけ得をすることができなくなります。結果船長を選び1番手は大建物は建てられずゲームエンドとなりました。3番手はコーヒータバココーン3枚小倉庫プレイで28点出荷、1番手は港で24点出荷でしたのでそれよりも多く出荷できました。とにかくプランテーションタイルに偏りの出る妙な展開でしたが、偏りをうまく活かしてコーヒータバコプレイで勝つことができました。

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4人プエルトリコで大学プレイの実戦譜ができたのでご紹介します。小市場サトウから商館プレイ、大市場とコーヒーを建ててからの大学プレイです。

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1番手初手宿屋のオープニングの3番手です。売りを急ぐためにサトウタイルを取りコーンインディゴサトウが売れたところです。R4-1建築 4:タバコに呼応して商館を建てました。

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売りを牽制し合って宿屋の採石場が活きる展開にはしたくないので、R6-3監督を打ち、下家のタバコを売らせる代わりに出荷点を稼ぎます。

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R7-1監督を打ち、R7-3商人では商館効果でサトウを売却します。

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大市場を経由して、R10-4建築でコーヒーを建てました。これで商人が入ればコーヒー大小市場売りが約束されます。

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R12-2の商人でコーヒーを商館効果で大小市場売りし市役所を建てます。R13-1で続けて建築が入り、建築の空きが2スロットだったので満を持して大学を建てました。

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R13-2船長が入ったので、コーヒーを残しR13-3商人で大建物分のお金を得ました。R13-4造船所に人を乗せる市長が入り、R14-2建築で砦を建て、大学効果で稼働しました。下家は市長を入れても勝てないと判断しR14-3監督を入れましたが、1番手は自分の点だけが伸びるR14-4開拓を選びゲーム終了です。このように、大学プレイは商館プレイと相性が良いです。商館プレイの自然な発展形として、建築スロットの空き次第で逆算して大学を建てるとひとりだけ大建物を稼働させることができます。インディゴプレイヤーの方が自然に大学プレイをすることができますが、コーンプレイヤーでも商館プレイからの発展で大学プレイ勝ちを狙うことができます。

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