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指輪物語(Der Herr der Ringe)

 「指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング/ Lord of the Rings)」(Reiner Knizia / Kosmos / 2000)は、J. R. R. Tolkien 原作の小説「指輪物語 (The Lord of the Rings)」をテーマとした、協力タイプのボードゲームです。プレイヤーは「ホビット」となり仲間と力を合わせて滅びの山に「ひとつの指輪」を葬るために旅に出るという、原作ファンや映画ファンにはたまらないテーマです。カプコンの出した日本語版が手元にありますが、惜しむらくは、一度読んだくらいではどのような手順で遊んでいいのか不明なくらいマニュアルが分かりにくいということでしょう。

 プレイヤーたちのひとりでも生き残れば勝利という、ドイツのボードゲームでは珍しい勝利判定となっています。「イベントカード」をめくることで各シナリオでのイベントが進行し、「ホビットカード」をプレイすることで歩みを進めることができます。途中、「指輪」の力を使って一気にコマを進めたり、「ガンダルフカード」や「特殊カード」の力によって冒険を有利に進めることもできます。また、ダイスを振ることで「サウロンの眼」がホビットたちを発見するのに近づいていきます。サウロンの手から逃れ、「モリアの坑道」→「ヘルム峡谷」→「シェロブの巣」→「モルドール」と歩みを進め、指輪を葬りに行きます。

 このクニツィアの「指輪物語」以前、ボードゲームは他のプレイヤーと競うものであり、「1対多」という図式の「スコットランドヤード」などのゲームはあったものの、他のプレイヤーと協力して勝利を目指すというゲームはそれまでほとんどありませんでした。しかしこのゲーム以降、協力ゲームがいくつも登場し、最近の話題作である「キャメロットを覆う影」ではテーマを活かした協力タイプのボードゲームのひとつの完成型に達したように思います。

 協力タイプの宅上ゲームの雄と言えばTRPGで、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」以降、アメリカで発達して行きました。その発展の途中で「クトゥルフの呼び声」のサプリメントのシナリオから「アーカムホラー」が協力タイプのボードゲームとして登場したこともあります。最近、思い出されたように新版が発売されましたが、クニツィアの「指輪物語」の登場が「アーカムホラー」の再販に影響を与えたのではないかと個人的には思っています。他にも、RPGの派生としてのボードゲームというものはいくつも生まれ、そして忘れ去られていったように記憶しています。

 また、「丘の上の裏切者の館」の登場も、この「指輪物語」以降の流れのひとつだと思います。ゲームシステムが、ボードゲームの抽象化の作法で作られているというよりは、RPGの物語性の文法で作られていると思えるからです。細かな立証を飛ばした乱暴な意見ですが、クニツィアの「指輪物語」の、ドイツのボードゲームとしての協力ゲームはこうあるべき、というひとつの答えに対し、そんなの何十年も前に通過してるよ、というアメリカの宅上ゲームの反論、といった図式があるのではないかと思っています。

 このボードゲーム側からの歩み寄りとRPG側からの歩み寄りの先に、今まで存在しなかった宅上ゲームの新ジャンルの完成がなされるのではないかと考えています。ボードゲームにおいて、ある種のテーマゲームがパズル性ではなく物語性を持ちはじめており、それはある意味ダイスロールを必要としないロールプレイングゲームのひとつの表現形式であるとも言えるのではないか、と感じます。それらの半歩先に新種の宅上ゲームが続々と登場するような、祭りの前夜のような、そんな感じがしてなりません。ただの揺り戻しでなければ、ですけれど。

【玩】ボードゲームロードオブザリング指輪物語
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Der Herr der Ringe(指輪物語)
 Kosmos
 ロード・オブ・ザ・リング 〜指輪物語〜(カプコン)

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