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2005年11月24日

プエルトリコ戦略論(定跡・プレイスタイル)

 3人プレイにおいては分岐が少ないため、初期プランテーションの「コーン」の有無によって序盤の数ラウンドが必然的に定跡(定石)化されています。また、序盤でリードしてそのわずかなをリード維持しつつ逃げ切る「工場」→「ギルドホール」の速攻型のプレイスタイルがあり、非常に高い勝率を得ることができるようです。基本的には3人プレイだと出荷型有利、5人プレイだと建築型有利と人数が少ないほど出荷型が有利なのですが、3人プレイにおいて高い勝率を得るのは速攻建築型のようです。しかしながら、私自身その手順を完全に理解していないので、3人プレイにはどうやら必勝パターンに近いものがあるようです、という紹介に留めます。

 4人プレイにおいては、他のプレイヤーがどう行動するかによって分岐が多くなるため、初期プランテーションの配置だけでは序盤を完全に定跡化するのは困難です。唯一、2番手プレイヤーのみほぼ望み通りの選択を2ラウンド続けて行えるため、定跡化されている手順があります。最も有名な手順が、「2番手宿屋定跡」です。

 「2番手宿屋定跡」は、第1ラウンドで1番手が「市長」もしくは「建築」を選択したとき以外、ほぼ確実に行える定跡手順です。2番手「建築」で「宿屋」、同ラウンドの後手番の「市長」で「宿屋」に人を配置します。第2ラウンドで2番手「開拓」を選択し、人の乗った「採石場」が得られます。次に同ラウンドの後手番の「市長」では「インディゴ」に人を配置します。以降、「建築」フェイズで「小インディゴ生産所」を「採石場」ボーナスによって無料で建築し、次の「市長」で「小インディゴ生産所」に人を乗せ、「開拓」で人の乗った「インディゴ」を取り、インディゴ生産体制を整えます。

 途中、「コーン」を入手できるケースでは人の乗った「コーン」を先に取ったり、「監督」が入ってしまった場合に「空船長(カラ船長:自分は出荷できないけれど他人の生産物を流す)」を行わなければならないケースを除いて、ほぼ一本道の定跡となっています。しかしながら、ここまで頑張って体制を整えても、形勢はやや不利といったところで、現在ではあまり選択する人のいない定跡です。この定跡は、どうしても「宿屋」プレイで戦いたいという人や、序盤の手作りが分からないのでとにかく確実な手順を覚えてみたい、という人くらいにしかお勧めできない定跡です。

 不利な理由は、「ダブロン」不足です。このゲームではお金を使って拡大再生産するのが序盤の重要な目的ですので、いきなり「宿屋」を建てて、瞬間0ダブロンになるというのが非常にまずいのです。生産体制を整えなければお金を得ることも次の「建築」もできません。金鉱掘りやボーナスの1ダブロンでお金を得るしかありませんが、それでは生産体制が整わず、生産体制を整えると金欠状態が続きます。それだけならいいのですが、その間に他のプレイヤーに「監督」→「商人」と選ばれ、先にお金を得られてしまうとどうしても不利な戦いとなってしまいます。


 また、「プランテーション」や「建物」には効率や効果の高い組み合わせがあります。一般に「コンボ」などと呼ばれたり、「○○型」と呼ばれるプレイスタイルが存在します。ここでは、4人プレイを前提として代表的なふたつのプレイスタイルを紹介します。

「ギルドホール速攻型」
 このスタイルは、早めに「タバコ」や「コーヒー」などの生産体制を整え、3種生産体制が整ったあたりで「工場」を建て、そして「ギルドホール」を建築し、次々に生産所を建てて行き建築スペースを埋め、速攻で逃げ切るというプレイスタイルです。建築型の代表的なプレイスタイルのひとつとなっています。
 建築VPが23ポイント程度、ボーナスVPが9〜10ポイント、出荷VPが2〜10ポイント程度と、最終的には40VP前後くらいですので、ロースコアでの逃げ切りを目指します。そのため出荷型プレイヤーに20ポイント以上出荷されるとほぼ追いつかず、逃げ切ったと思っても差し切られ、僅差で敗北することも多いです。
 他のプレイヤーのVPをカウンティングしつつ、状況によっては建て切り終了を諦める必要もあります。しかしながら、このスタイルを実現できるようになっている頃にはお金の使い方が上手になっておりすでに初級者を脱して中級者になっていると言えるので、まずはこの型を覚えてみるのが良いと思います。

「原始出荷型」
 初級者が簡単に目指せるプレイスタイルで、最も原始的な出荷型のプレイスタイルです。プランテーションに「コーン」があれば積極的に「開拓」を選び、「小倉庫」を建てて「コーン」を腐らないようにしつつ、ボーナスダブロンを拾いながらなんとかして「造船所」を建築します。場合によっては「農地」を建てて「コーン」が出るのを期待してプランテーションタイルをめくり、「採石場」をいくつか得て「造船所」を建てやすくするというのも有効です。
 最終的に、「コーン」5枚以上を揃え、ひたすら「監督」→「船長」を繰り返し、30VP以上の出荷ポイントを獲得して勝利を目指します。運良く「税関」を建てられればボーナスVPも得ることができます。
 シンプルで何も考えずにできるプレイスタイルですが、うまく行くことは少ないでしょう。出荷に相乗りをしてくれるプレイヤーがいたとしてもそのプレイヤーは「港」によってもっと多くの出荷ポイントを得ていたり、下家プレイヤーに「監督」を選ばれて自分は「コーン」を1個も生産できない、なんてこともあるでしょう。目指すものが丸分かりのため、簡単に対策されてしまうのが最大の弱点です。そのため、絶滅に近いプレイスタイルですが、より効率の良い手順を考える上で一度経験しておいても損はないと思います。

2005年11月23日

指輪物語(Der Herr der Ringe)

 「指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング/ Lord of the Rings)」(Reiner Knizia / Kosmos / 2000)は、J. R. R. Tolkien 原作の小説「指輪物語 (The Lord of the Rings)」をテーマとした、協力タイプのボードゲームです。プレイヤーは「ホビット」となり仲間と力を合わせて滅びの山に「ひとつの指輪」を葬るために旅に出るという、原作ファンや映画ファンにはたまらないテーマです。カプコンの出した日本語版が手元にありますが、惜しむらくは、一度読んだくらいではどのような手順で遊んでいいのか不明なくらいマニュアルが分かりにくいということでしょう。

 プレイヤーたちのひとりでも生き残れば勝利という、ドイツのボードゲームでは珍しい勝利判定となっています。「イベントカード」をめくることで各シナリオでのイベントが進行し、「ホビットカード」をプレイすることで歩みを進めることができます。途中、「指輪」の力を使って一気にコマを進めたり、「ガンダルフカード」や「特殊カード」の力によって冒険を有利に進めることもできます。また、ダイスを振ることで「サウロンの眼」がホビットたちを発見するのに近づいていきます。サウロンの手から逃れ、「モリアの坑道」→「ヘルム峡谷」→「シェロブの巣」→「モルドール」と歩みを進め、指輪を葬りに行きます。

 このクニツィアの「指輪物語」以前、ボードゲームは他のプレイヤーと競うものであり、「1対多」という図式の「スコットランドヤード」などのゲームはあったものの、他のプレイヤーと協力して勝利を目指すというゲームはそれまでほとんどありませんでした。しかしこのゲーム以降、協力ゲームがいくつも登場し、最近の話題作である「キャメロットを覆う影」ではテーマを活かした協力タイプのボードゲームのひとつの完成型に達したように思います。

 協力タイプの宅上ゲームの雄と言えばTRPGで、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」以降、アメリカで発達して行きました。その発展の途中で「クトゥルフの呼び声」のサプリメントのシナリオから「アーカムホラー」が協力タイプのボードゲームとして登場したこともあります。最近、思い出されたように新版が発売されましたが、クニツィアの「指輪物語」の登場が「アーカムホラー」の再販に影響を与えたのではないかと個人的には思っています。他にも、RPGの派生としてのボードゲームというものはいくつも生まれ、そして忘れ去られていったように記憶しています。

 また、「丘の上の裏切者の館」の登場も、この「指輪物語」以降の流れのひとつだと思います。ゲームシステムが、ボードゲームの抽象化の作法で作られているというよりは、RPGの物語性の文法で作られていると思えるからです。細かな立証を飛ばした乱暴な意見ですが、クニツィアの「指輪物語」の、ドイツのボードゲームとしての協力ゲームはこうあるべき、というひとつの答えに対し、そんなの何十年も前に通過してるよ、というアメリカの宅上ゲームの反論、といった図式があるのではないかと思っています。

 このボードゲーム側からの歩み寄りとRPG側からの歩み寄りの先に、今まで存在しなかった宅上ゲームの新ジャンルの完成がなされるのではないかと考えています。ボードゲームにおいて、ある種のテーマゲームがパズル性ではなく物語性を持ちはじめており、それはある意味ダイスロールを必要としないロールプレイングゲームのひとつの表現形式であるとも言えるのではないか、と感じます。それらの半歩先に新種の宅上ゲームが続々と登場するような、祭りの前夜のような、そんな感じがしてなりません。ただの揺り戻しでなければ、ですけれど。

【玩】ボードゲームロードオブザリング指輪物語
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Der Herr der Ringe(指輪物語)
 Kosmos
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2005年11月22日

創作ゲーム「学校の怪談」 その2

 先日、創作ゲーム「学校の怪談」のβ版テストプレイを行いました。とある小学校の旧校舎に肝試しをするために入り行方不明となった生徒たちを別な生徒たちが救出しに行くというホラーゲームで、各プレイヤーは「意志」「オカルト知識」「機転」といったパワーカードを駆使し、校舎内で現れる幽霊と対決しながら迷い込んだ生徒を探して救出し、旧校舎からの脱出を目指すという協力要素のあるボードゲームです。途中で幽霊と遭遇することにより正気を失い「憑依」されたり、最後にはプレイヤーキャラクターと「幽霊」が入れ替わっていることもあるといった、ホラーの要素を入れています。

 3〜7人用のゲームとしてデザインしており、今回はプレイヤー6名でのテストプレイとなりました。プレイしてみた感じでは、一応ゲームとして成立しているようでほっとしています。しかし、ワイワイ盛り上がるカードプレイ型のシステムに、じっくり考える「役割カード選択制」という相性の悪いシステムを追加したため、リズムが悪く時間が掛かるという欠点がありました。次のバージョンでは廃止して別な部分に吸収する予定です。また、幽霊が現れるまでの緊迫感を表した「前兆」システムが全体のシステムに上手くなじんでいなかったのも改善点のひとつと思われます。

 途中から役割カードを廃止しプレイしてみたところプレイはサクサク行われるようになりましたが、システムの一部を急遽取り除いたためゲームバランスが崩壊し、手札切れを起こして各プレイヤーの正気ポイントがどんどん低下して、幽霊に「憑依」されるプレイヤーが続出するという悲惨なテストプレイとなりました。

 初プレイにも関わらず一部のプレイヤーが「幽霊」エンドを狙ったプレイをしてくれたおかげで、ゲーム終了時に「プレイヤーキャラクターが幽霊と入れ替わって校舎を出る」という要素が成立しているようで安心しました。



「学校の怪談」プレイイメージ

2005年11月17日

創作ゲーム「学校の怪談」

 「学校の怪談」は、現在制作中の創作ボードゲームです。もともと、4年ほど前に現代ホラーもののオンラインボードゲームとしてデザインしたものですが、このたびルールを練り直してリアルボードゲームとして再構成しています。マルチプレイ的要素はそのままに、最近あまり流行らないダイスロールなどのシステムを役割選択やカードプレイといった最近風のシステムに変更しています。また、オンラインゲームとして考えていたものを非電源ゲームにするということで、コンピュータゲーム的要素を排除しつつ実際のプレイヤー同士の会話が楽しめるものにしてみました。うまく行けば来年のゲームマーケットに出品したいと考えていますが、果たして無事完成するのでしょうか。

 テーマを考えてからシステムを考えていますが、どのようなシステムにしようか物凄く迷います。知識として持っているいろいろなゲームシステムに小手先で無理矢理当てはめることはできるでしょうが、このゲームにはこのシステムしかない、といった手応えを感じることができるシステムでないと、作っていてもなかなかしっくり来ないのです。

 先月、一緒にゲームを制作している友人たちにα版(と言っていいか分からないほどのテスト版)のテストプレイをしてもらったところで、今月はβ版のテストプレイの予定です。基本的なシステムは完成したのでバランスの確認が主な目的ですが、ゲーム自体の評価が低ければルールからまた練り直しです。

 そもそもは、「怖いホラーゲームを作りたい」という気持ちから作りはじめました。TRPGの「クトゥルフの呼び声」はキャラクターの恐怖はプレイヤーの笑いとなって怖くはなかった記憶がありますが、恐怖と笑いの類似性などという話を思い出します。 ファミコンの「スウィートホーム」は夜電気を消して遊ぶと子供心に怖かった記憶があります。「バイオハザード」は怖かった、というより場面場面にビクビクする心臓に悪いゲームでした。しかしながら、「スウィートホーム」から「バイオハザード」へのカプコンのホラーゲームの流れは注目すべき点だと思います。

 そう言えば、1990年代に「学校の怪談」ブームというものがありましたが、今はすっかり消えてなくなりました。それがなぜなのか、といった分析をしている本が最近発売されたので購入してみました。『「学校の怪談」はささやく』(一柳廣孝 編著 / 青弓社)という本です。興味深く読めたものの、残念ながらゲーム制作にはさっぱり役に立つ内容ではありませんでした。実際の怪談を集めた本は役に立ちますが、ボードゲームはTRPGと違ってシナリオに落とし込むのではなくて抽象的なシステムとして落とし込まなければならないので頭の中の変換作業が難しいです。

 関係ありませんが、最近ケーブルテレビで「リング」が放送されていて観ましたが、ちっとも怖くないのに驚きました。「昔見たときは怖かったような気がするのになぜだろうか?」と考えました。それは「リアリティ」の消失ではないかと思います。「呪いのビデオ」という要素にちっともリアリティを感じないのです。VHSのビデオデッキなどここ数年操作していなく、ビデオを見るとテレビから幽霊が出てくるという流れに感情が入って行かないのです。今ならDVDデッキでしょうが、「呪いのDVD-R」なんてのがあっても怖くないなと思います。デジタルデータに幽霊はふさわしくないのでしょうか。フィルムカメラの時代には「心霊写真」なんてものもありましたが、今ではメモリーカードにデータを保存するようになり、パソコンで簡単にコラージュできるので「心霊写真」に対しての怖さもなくなった気がします。まったく創作ゲームには関係のない話ですけれど。

「学校の怪談」はささやく
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 「学校の怪談」はささやく(青弓社)
 ゲームマーケット2006

2005年11月16日

インコグニト(Inkognito)

 「インコグニト」(Alex Randolph, Leo Colovini / Milton Bradley, Winning Moves / 1988)は、ヴェネツィアを舞台に4人のスパイが暗躍する推理ゲームです。4人のプレイヤーがそれぞれ正体を隠したスパイとなります。自分のパートナーとなるスパイを見つけ一緒に指令を達成したペアが勝利となります。

 パートナーとなるスパイが誰なのか特定するのが最初の目的です。しかし、スパイの「正体」も「体型」も持っている「指令」も不明です。自分のコマを動かして他のプレイヤーコマに接近し、質問をすることで少しずつ特定していくことになります。質問に対し質問されたプレイヤーは真実を示したカードと虚偽情報のカードをセットにして見せます。

 こうして互いに質問を繰り返していくことによってパートナーを捜していきます。パートナーが薄々特定できてきたら、「正体」のキャラクターの「クセ」をジェスチャーで伝えたり、また間違ったジェスチャーをすることで他のプレイヤーを惑わすこともできます。また、「大使」コマに接近することで、より精度の高い他のプレイヤーの情報を得ることもできます。

 パートナーが特定できたら、互いの「指令」カードの組み合わせで生じる「指令」を一緒に達成するように協力します。無事達成できれば互いに握手をして勝利となりますが、パートナーと思っていた相手が実はパートナーではなくて握手を拒否した場合は敵のペアの勝利となります。

 初めは誰が味方なのか不明で、特定してから協力して指令を達成するという、二段構えの少し変わった推理ゲームです。手探りで真実を確かめていくところは推理ゲームならではの面白さです。パートナーを見つけて終わりではなくて後半の指令達成パートがあるのが特徴で、もしかしたら間違っているかも知れないという段階から推理して先に動いたり、敵のペアの行動で予測したりと、自身の推理によって得られた確信に基づく行動での勝利を得たときは推理ゲーム好きにはたまらないものです。

 「警告のしるし」と呼ばれる覆面をかたどったボール抽選機(移動のダイス代わりのようなもので振るとカラーボールが3つ表示される)がカラカラと少しうるさく、ボールをケースに入れた順番で出目がやや偏る気がするのが難点だと思います。個人的には「警告のしるし」を使用せず、巾着袋に入れてボールを3つ握るのが良いと思っています。本当は使用した方が雰囲気が出るのでしょうけれど。

インコグニト(Inkognito)
インコグニト(楽天で購入)

Winning Moves

アーカムホラー 新版(Arkham Horror)

 「アーカムホラー」(Lynn Willis, Charlie Krank, Richard Launius / Chaosium, Fantasy Flight Games / 1987, 2005)は、クトゥルフ神話を題材としたTRPG「クトゥルフの呼び声」をモチーフとしたアーカム市が舞台のボードゲームです。プレイヤーは協力してエンシェント・ワンによるアーカム市の崩壊を防ぐのが目的です。オリジナル版が1987年に Chaosium から発売され、日本語版が1988年にホビージャパンから発売されました。長らく絶版となっていましたが、このたび Fantasy Flight Games から新版が発売されました。新版は旧版にルールに変更が加えられているようです。公式サイトではマニュアルがダウンロードできます。

 20年近く前に出た協力タイプのボードゲームがバージョンアップしての登場です。新版のマニュアルを読む限り面白そうなのですが、国内のショップでは売り切れており、現在入手難となっています。11月下旬以降にメーカーが再生産予定とのことですので、待つしかないようです。

Arkham Horror(アーカムホラー)
 Fantasy Flight Games(ファンタジーフライト)
 Chaosium(ケイオシアム)

2005年11月08日

丘の上の裏切者の館(Betrayal at House on the Hill)

 「丘の上の裏切者の館(ビトレイアル・アット・ハウス・オン・ザ・ヒル)」(Bruce Glassco /Avalon Hill, Hasbro / 2004)は、丘の上に建つ古い館を探索するホラータイプのボードゲームです。プレイヤーたちは協力して館を探索し、最終的にはヒーローとして幽霊と戦うなど目的を達成することを目指します。プレイヤーの中にひとり裏切り者が居ることが発覚します。裏切り者は幽霊の手助けをして、幽霊側の目的を達成するのが勝利条件です。

 ゲームは前半の探索ターンと後半の幽霊発生後のターンに分かれています。前半では館の探索をします。プレイヤーは「移動」「新しい部屋の発見」などの行動を取り、館を調べて行きます。探索中に幽霊が出る「前兆」カードを引くと、「ホーント・ロール」と呼ばれる出現チェックをします。幽霊が現れるとどんな幽霊が発生したのか、そして誰が裏切り者なのかをチャートにより確定させます。その発生するシナリオは50種類あります。

 裏切り者は「裏切り者の書」を読み、幽霊側の勝利条件を確認します。残りのプレイヤーはヒーローとなり「生き残りの秘密」を読み、勝利条件を確認します。そして後半部分の幽霊発生後のターンが始まります。ヒーローのターン、裏切り者のターン、幽霊のターン、の順に処理をして、目的を達成するためのトークンを集めるなどを行います。目的を達成した側の勝利となります。ヒーローはひとりでも生き残って目的を達成すれば、裏切り者は自身が死んでしまっても幽霊側の目的を達成すれば勝利となります。

 このゲームは協力ゲームですが、ひとりだけ裏切り者がいます。「キャメロットを覆う影」と違うのは、誰が裏切り者かプレイ開始時には決まっていなく、裏切り者が誰かが決まったあとでは誰の目にも明らかであるという点です。前半の探索部分では誰が裏切り者か確定していなく、チャートによって突然裏切り者が決まるため、誰が裏切り者なのか当てるという要素はありません。

 また、非常にRPGチックなボードゲームであるとも言えます。Avalon Hill はTRPGも制作しているところですので当たり前かも知れませんが、RPGをボードゲームにしたらこうなる、というひとつの見本だと思います。ルールで演技することを(ほとんど)求められていない点を覗けば、コマやマップボードが一式付属したTRPGのサプリメントのようでもあります。ホラーゲームではおなじみの「正気チェック」がありますし、失敗すると「知識」や「正気」に精神ダメージを受けるという点など、TRPGゲーマーにとっては実にたまらないシステムです。

 裏切り者の確定が機械的であるという部分など、TRPGでは必要な「ゲームマスター」が不在でも遊べるように作られている部分は一長一短と思えます。しかしながら、勝利しなくても雰囲気を味わいながら過程を楽しめればいいというTRPGの良さがあり、このゲームはそういう良さを楽しめるゲームです。ある種のテーマを持ったボードゲームはこのゲームのように物語性を帯びて発展して行くのではと思わせる、示唆に富んだゲームシステムだと思います。

Betrayal at House on the Hill(丘の上の裏切者の館)
 Avalon Hill(アバロンヒル)
 Hasbro(ハズブロー)

七人の賢者(Die Sieben Weisen)

 対立した勢力同士の戦いと言えば、同盟と離反がめまぐるしく起こる交渉ゲームの「七人の賢者」(Reiner Stockhausen / alea / 2002)が挙げられます。七人の賢者は、プレイヤーが7人のいずれかの賢者となり他のプレイヤーと交渉して同盟を結びながら戦闘に勝ってポイントを稼ぐというマルチタイプのゲームです。

 ボードは非マップ型で戦闘システムは基本的にはカードを出して数が多ければ良いという、いたってシンプルなゲームです。そのため、階級の序列とその儀式タイルでの獲得ポイントの順位による差と自分の手札と他人の獲得ポイントなどを元に、どう振る舞えば他人を出し抜ける有利な交渉ができるかという、交渉にポイントが置かれたマルチゲームです。

 ボードは儀式タイルを3枚配置してスタートします。戦闘が終わると別の2枚のどちらか一方に移動します。儀式タイルには7人の賢者の階級の序列が示されており、儀式タイルごとに違います。序列ごとにその儀式タイルで戦闘に勝利した順に「ポイントクリスタル」を得ることができます。どの賢者を選ぶかは、手札の魔法カード、賢者の序列などを考慮して決めることになります。その後同盟交渉が行われます。

 同盟交渉では、得られるポイントと他のプレイヤーの現在の獲得ポイントなどを考慮し、自分にとって優位になるように同盟を結ぶよう働きかけます。必然トップ叩きや潰し合いというマルチゲームにありがちな事態になりますが、交渉を有利に働かせることでのみ出し抜くことができます。同調するも裏切るも交渉能力次第となります。

 3人から5人でプレイできますが、面白いのは奇数人数です。1:2、3:2、などとなりますので戦闘におけるパワーバランスが崩れがちです。自分の獲得ポイントが低い場合は数の多い方に属しつつもすぐに戦闘を降りて魔法カードを補充したりと、出し抜くことができる場合もあります。

 交渉のウェイトが高いのでいつもプレイするのはやや重いです。前回敵だったプレイヤーとも今回は同盟を組まざるを得ないといったケースなど、陣営の入れ替わりが頻繁に起こるゲームシステムですので、交渉は完全にプレイヤー任せながら、多人数ゲームにおけるパワーバランスの変化をシステム化している部分が評価できると思います。

Die Sieben Weisen(七人の賢者)

フェレータ(Verräter)

 裏切るゲームと言えば、まずは「フェレータ(反逆者、裏切り者)」(Marcel-André Casasola Merkle / Adlung-Spiele / 1998)が思い浮かびます。フェレータは、ワシ陣営とバラ陣営のふたつの勢力の戦いをテーマとしたカードゲームです。プレイ人数は3もしくは4人です。3人プレイの場合は奇数ですので陣営のバランスは均衡にはなり得ません。4人プレイの場合は均衡になり得ます。そのため、人数によってゲーム性が変わります。

 このゲームの特徴は「アクションカード」と呼ばれる役割を現すカードがあることです。その中には、このゲームの題名ともなっている「反逆者」カードが含まれています。そして、このゲームの面白さはこの「アクションカード」の選択システムにあります。6種類あるアクションカードをランダムに1枚抜きデッドカードとします。次にスタートプレイヤーが残りのカードの中から自分の欲しいカードを1枚選択します。順番に次のプレイヤーから残ったカードの中からアクションカードを選んで行きます。選んだカードの効果を活かしてポイントを稼ぐことを目指します。

 アクションカードの中には自分の陣営を変更する「反逆者」カードが含まれていますので、自分のカード選択の番に「反逆者」カードがすでにない場合は、ランダムでデッドカードになったか、誰かが裏切る気つもりで選択したかのどちらかです。そのため、カード選択の駆け引きが生じ、いかに多数派として戦って得点を稼ぐか、いかにタイミング良く裏切って出し抜くかがポイントとなります。そのため、カード選択の手番が重要なゲームとなっています。裏切ったり出し抜いたりできるゲームをしてみたいのならお勧めです。このカード選択システムは後に「あやつり人形(Ohne Furcht und Adel)」の作者が参考にし、類似の職業カード選択システムとして採用しています。

Verräter(フェレータ)

キャメロットを覆う影(Shadows over Camelot)

 「キャメロットを覆う影(シャドウズ・オーバー・キャメロット)」(Serge Laget, Bruno Cathala / Days of Wonder / 2005)は、アーサー王伝説が舞台で、プレイヤーたちは円卓の騎士となり協力して悪の勢力を倒すと勝利となるゲームです。しかし、円卓の騎士の中にひとりだけ裏切り者がいます。裏切り者は他のプレイヤーたちを妨害し、悪の勢力が勝つと勝利となります。

 ボードゲームでは数が少ない協力ゲームであり、同様に数が少ない裏切り者がいるゲームです。そのため、非常に珍しいタイプのボードゲームであるとも言えます。面白いと思うかどうかは個人によって感性が違うとしても、珍しいシステムですので一度プレイしてみた方が良いと思います。協力と裏切りというものが上手にシステム化されており、テーマであるアーサー王伝説も活かされている、極めて高い評価ができるゲームだと思います。

 プレイは基本的に会話によって全員の合意を得ながら行動して行きます。初期状態で6種類あるクエストをどのように攻略して行くか、互いの手札やキャラクターの能力などを軸に戦略を立てることになります。各プレイヤーは自分の手番が来ると最初に悪の勢力のプレイをし、次に円卓の騎士である正義側の勢力のプレイをします。必ず悪の勢力側も進行して行きますので、協力しないととても攻略できません。しかし、裏切り者が混じっているので全面的に信頼すると取り返しのつかない事態になることもあります。裏切り者のプレイヤーはソロクエストを故意に失敗させたり、いろいろと理由をつけて協力を拒んだり、わざと戦略を間違った方向に誘導したりと、いろいろな妨害をします。

 裏切り者を「告発」することができますが、告発が間違う危険性もありますし、裏切り者自身が虚偽の告発をすることもあります。また、裏切り者が確定したあとは以後悪の勢力のみをプレイしますので告発すれば良いというものでもありません。怪しいプレイヤーが居ると分かっても「裏切れない状況」を作りつつ協力させる、言わば「泳がせておく」というのも実に有効な戦略でもあります。

 このあたりの協力と裏切りのシステムが非常に良くできているのですが、人数によってゲームバランスが激変するのが難点でもあります。3〜7人でプレイできますが、人数が少ないと裏切り者が有利に、多くなると正義側が有利になります。4人プレイだと基本ルールのままでもバランスが取れていると思いますが、5人以上となると初期状態で役割をなしにしたり、初期手札枚数を減らしたり、初期生命力を減らしたりと細かなバランス調整をした方が良いと思います。初めてプレイする人と経験者のバランスによっても調整すると良いでしょう。

 また、裏切り者が居るのか居ないのか分からない方がプレイに深みを与えますし、裏切り者が居ないプレイはさみしいものがありますので、「プレイ人数+1枚」のカードを使用して、裏切り者が居るかいないかは分からないけれど高確率で居る、というようにプレイすると楽しいと思います。

 余談になりますが、協力と裏切りと言いますと、同じ非電源の卓上ゲームであるTRPGでは古くから行われていることです。長いキャンペーンのクライマックスのプレイングの前日にゲームマスターがひとりのプレイヤーに電話を掛け、今まで見え隠れしていた魔王の手下の正体が君であると告げ、最後の戦いで後ろからナイフで刺すようにと指示を出します。そしてそのシーンで仲間を後ろから刺し、「はっはっは、実は俺が魔王様の部下だったのだ」「バ、バカな」、といったことは頻繁に行われてきました。一種の風物詩のようなもので、30年前にTRPGが通過した地点でもあります。個人的には、ボードゲームの進化のひとつの方向性が垣間見えるような気もします。

シャドウズ・オーバー・キャメロット
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Shadows over Camelot(キャメロットを覆う影)