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2005年10月16日

人狼の系譜

 「人狼(ワーウルフ)」と呼ばれるゲームがあります。とある村に狼男が紛れ込み、毎夜村人を喰い殺します。村人たちは狼男と思われる人間を特定し吊るし上げることで村を守るのが目的で、一方狼男は村人全員を喰い殺し村を滅ぼすのが目的という、サスペンスホラーな雰囲気のパーティゲームです。

 元々はロシアの伝統的ゲームのとのことで、そのためか複数の出版社と複数の各国語版が存在し、どれがオリジナル作品でどれがリメイク作品なのか分かりにくくなっています。リメイク作品にしても権利関係がどうなっているのかもよく分かりません。そこで、分かりうる限り系譜を整理してみることにしました。

 「The werewolves of Millers Hollow(ミラー谷の人狼・ミラーズホロウの人狼)」のマニュアルには、以下のように書かれています。

This game is freely based on a traditional Russian Game, also known as "Mafia" or "Spies", which appeared in the Soviet Union in the 1930's.

(このゲームは、「マフィア」や「スパイ」として知られる伝統的なロシアのゲームに大まかに基づいています。その伝統的なゲームは1930年代にソビエト連邦に現れました。):Midge訳

 また、同ゲームの公式サイトにはバックグラウンドとして以下のような記述があります。

The Werewolf game, also known as Mafia, is a traditional russian party game. Originally, due to stalinian paranoia, the aim of the game was to find out the two foreign spies. Now, it's to unmask the two inflitrated policemen... or the two werewolves.(中略)I found the rules of this game on the internet.

(「マフィア」として知られる人狼ゲームは、伝統的なロシアのパーティゲームです。元々は、(スターリン信奉者のパラノイアによって)、ゲームの目的はふたりの外国のスパイを見つけ出すことでした。現在、その目的はふたりの潜入した警官……もしくはふたりの人狼の正体を暴くこと、となっています。(中略)私はこのゲームのルールをインターネット上で見つけました。):Midge訳

 このことから、元々すでに werewolf がテーマになったゲームが一般的なものとして存在していたようです。「The werewolves of Millers Hollow」は2001年発売で、著者は Philippe des pallières & Hervé Marly となっています。彼らは新キャラクターを追加して自家製バージョンとして発表したとのことです。著者のひとりである Philippe des pallières は他にも作品を発表しています。

 「The werewolves of Millers Hollow」の出版社はフランスの「Asmodée Editions」です。同社によるドイツ語版のタイトルが「Die Werwölfe von Düsterwald(デュスターバルドの狼人間)」で、元々のフランス語版のタイトルが「Les loups-garous de Thiercelieux」で、内容はどれも同一のようです。ちなみにThiercelieux は著者の Philippe の住んでいるフランスの小さな村とのことです。

 この出版社のものは数ある人狼ゲームの中でカードのデザインが最も素晴らしいと思います。特徴的なものとしては、「少女」という「誰が狼男なのか夜中にこっそりと隠れ見る」能力がある役割カードや、「キューピッド」という「指定した2人を恋人にする(恋人となったものたちはたとえ2人が人間と狼男だとしても2人が生き残るのを目的として生きる)」能力がある役割カードなどがあります。

 イタリアの出版社「daVinci Editrice」からは「Lupus in Tabla(タブラの狼)」が発売されています。初版は2002年に発売されました。「フクロウ」と「神話マニア」の役割カードが追加されるなどいくつかの改訂がされ、2004年に第2版が発売されました。現在入手可能なのは第2版だけだと思います。
 「フリーメーソン」という「2人ひと組で存在し、互いに仲間を確認できる」能力を持った役割カードや、「取り憑かれた者」という「狼男側が生き残るのが勝利条件」である役割カードなどが特徴的です。

 また、「Are You a Werewolf?(汝は人狼なりや?)」(2001年発売)の公式サイトには、古典的なトランプカードゲームの「マフィア」を基にしている、というようなことが書かれています。そして、マニュアルには Andrew Plotkin なる人物が werewolf をテーマにすることを思いついたと書かれています(公式サイトにはその記述はないようです)。本作品の著者情報はありません。「Are You a Werewolf?」はアメリカの出版社の「Looney Labs.」から発売されています。予言者以外の特殊な役割カードがなく、最もシンプルなバージョンとなっています。

 「Are You a Werewolf?」のマニュアルに記述のある、 werewolf をテーマとした考案者である Andrew Plotkin 氏は「Zarfhome」というサイトを運営されています。そこには werewolf についての詳細な記述があります。自分は werewolf をテーマとした考案者ではあるけれど、元々が伝統ゲームなので権利を主張しないとおっしゃっています(素晴らしい方だと思います)。ここから各商業版の人狼が生まれていったというのが真相のようです。

Zarfhome : werewolf(werewolf の考案者のサイト)
 Les loups-garous de Thiercelieux
 Les loups-garous de Thiercelieux(Asmodée Editions内)
 Are You a Werewolf?(汝は人狼なりや?)
 Lupus in Tabla(タブラの狼)